臼澤みさき、13歳。岩手県大槌町で、家族とともに暮らしている。この春、中学2年生になった。小学3年のときから習い始めた民謡が、彼女に新しい世界を開いた。7月25日、テイチクからCDデビューする。
もともと歌うことが好きだった彼女は、習うほどに民謡が好きになり、将来は民謡歌手になりたいと思うようになった。歌うことで人に喜んでもらえることも知った。高齢者の慰問に出かけて行って歌うと、「おじいちゃんやおばあちゃんが、歌を聴いて笑ったり泣いたり、手拍子をしてくれたり……。歌うことで元気づけることができたらいいなと思いました」という。一方、民謡コンクールへの挑戦も続けてきた。一昨年の「青少年みんよう全国大会」でグランプリを勝ち取り、「外山節全国大会」では少年少女の部で優勝するなど、その実力が認められている。
昨年3月11日、東日本大震災によって、大槌町を含む岩手県の沿岸地域は大きな被害を受けた。それからずっと、被災地の様子が報道され続けた。被害の実態、困難から立ち上がろうとする人々の声、支援する人々の活動……。彼女自身、避難所生活を送る人たちのために歌による慰問活動をしていて、テレビの取材を受けたこともあった。そうしたさまざまな報道の中、民謡を歌う女の子として、その姿が関東地区で放送されたテレビ番組に映し出された。その画面がきっかけで見出されたのである。
デビュー曲は「故郷 ~Blue Sky Homeland~」。ふるさとを離れた人が、遠く切なくふるさとを想う気持ちが込められている。「大槌町の風景や、夏の日のこととかを思い浮かべながら練習しました」という臼澤みさきの声を通して、聴く人の胸に歌詞が切々と迫る。カップリングの「友輝(ゆうき) ~Red Sky Homeland~」は、ふるさとを離れて都会に暮らす人を想う曲だ。「故郷 ~Blue Sky Homeland~」のアンサーソングとなっている。「ふるさと」や「絆」が問い直される今、この2曲は、人々の心に何を届けるのだろう。
大槌町内でも、彼女が住む地区には津波の被害がなかった。しかし、停電や断水が続くなど、たいへんな時期を過ごした。だから、国内外からたくさんの支援を受けたことに対する感謝を忘れない。歌うことで、お返しがしたいと考えている。「たくさんの人にCDを聴いてもらいたいです。立たされている状況はそれぞれ違うと思うけれど、この曲を聴いて共感してもらえたらうれしい。」小さなシンガーは今、大きな明日に向かって歩き出した。